![]() 福永:ではちょっと話題を変えさせて頂きます。昨日の話でキーワードの一つだった「保険会社」について伺いたいと思います。それで、すごく単純な疑問として、最近ではアメリカも経済が難しい中で、保険会社が潰れてしまうということもあるかと思います。そうするといったい患者はどうなってしまうのでしょうか?
喜吉:その質問は面白いですね。それこそ倒産してはいけない、倒産することが予測されてない会社なので、倒産危機になったらたぶん大パニックになるでしょうね。 福永:普通の民間会社ですよね。半分政府が入っているのでもなく。
喜吉:民間の保険会社は完全に民間で、政府でも北海道の夕張が強制破綻とかありましたけど、そういうこともありうるわけです。医療費は増大する一方です。テクノロジーや技術が向上していくことは本当にいいことで、複雑な画像の診断とかできるようになっていいけれども、その分発見される病気も多くなり、治療も多くなり、医療費もかさむ。終末期医療では人生最後の5日間の治療費がどれだけ高価なものかって今けっこう話題になっています。終末期だけにいろんな機械が使われていて、これからどんどん高齢化社会になってそういう状況になる人が多くなる中で、医療費もどんどん増えていくでしょうね。
福永:いつ自分の契約している保険会社が危機に陥るかもしれないと思うと、不安なのではないでしょうか?
喜吉:不安はあるかもしれないですけど、他に選択肢がない状況だと思います。会社を通して保険に入っていられる人はラッキーです。だけど、会社の保険会社に不安を持っていたとしても別に替えられるわけではないし、個人で保険会社に入ることはできるけれど、それはとても高価なのでそこまでする人は多分あまりいないです。だからなされるがまま、ですよね。確かにすごく不安は強いと思います。
喜吉:でもきっと潰れる前に企業としては、サービスの縮小とか質が落ちると思います。例えばスタッフが減ったり、電話での相談窓口があったとしても、今まではすぐ出ていたのに、一時間以上待たないと出なかったりということは起こるかもしれません。事後報告で、個人負担量が上がりますよって言われることもあるかもしれません。外来へ行くとき日本は大体3割払うけれども、こちらは例えば私の入っている保険は外来一回20ドル払います。ところが、個人負担が大きくなることで30ドルや40ドルになる、そういった個人への負担が多くなることは予想されることですよね。。
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福永:昨日はたくさんの無保険者がいるということをうかがいました。無保険者は基本的な医療が受けられないということでした。SFGH(サンフランシスコ・ジェネラル・
ホスピタル)では受けられるようですが、そういう病院はすごく少ないということでしたよね。実際に多くの無保険者は、本当にちゃんとした医療が受けられているのかどうか、すごく心配です。本日視察したSFGHにはたくさんの患者が見られました。しかし、本当は医療を受けなきゃならないのに受けられないという人がもっともっといるのではないかという気がします。実際のところはどうでしょうか?
喜吉:本当にそのとおりで、受けるべき医療を受けていないと思います。一応どこの誰でも救急救命室に来たら受け入れなければならないわけです。それは連邦の法律になっていますけれども、無保険者を受け入れている病院へのサポートがあまり充実していないのです。受け入れたからって国がその金額を全部支払ってくれるわけではありません。そのかわり税金が安くなるなど、その病院を間接的に援助するようなことはありますけど、それでも病院への負担はすごく高くて、大体救急救命室はもう赤字、赤字で大変です。あと、医療は何かが起こってから対処的に治療するだけではなくて、その予防や早期発見というのも重要なことだし、また治療後のフォローアップ、定期健診や内服を続けること、食事療法や運動、そういったところも総合的に治していかないとせっかく治したものがまた悪くなってしまうことが大いにありますね。無保険者はそういう医療が受けられていないわけで、彼らが今おかれている状態は、本当にひどい状況だろうと思います。
無保険者のほとんどの人は何らかの仕事をしています。仕事をしていても会社は医療保険を提供してくれない、自分で保険料を払えるほど裕福ではない、そういう人が無保険者になります。なので、すごく苦しい生活をしながらも、仕事はして自活しているので、国からも援助を受けられないのです。子供も予防接種を受けられない場合が多いです。無保険者の死亡率もやっぱり高いと言われています。これは政策で変えていかなくちゃいけないと思います。今回の大統領選挙でもこの問題は本当に注目されているし、国内でも本当にに変えていかなくちゃという関心は高まっていると思います。
福永:さっきの保険会社が潰れたらという話で、もしそうなるとみんな無保険になってしまうと思います。今おっしゃっていたような人たちが、もっと増えるかもしれない、という危機に今あるということですよね。病院は病院で営利というか黒字を出さなきゃいけないという中で、無保険者を受け入れたくないという気持ちは当然出てくるでしょうから、ほんとに極一部の裕福な限られた人しか医療を受けられないという状況にもなりうると。
喜吉:こういった4000万人もの困っている人がいて、彼らはこの状況を変えたいと思っているけれども、結局政治とか政策の意思決定をしている人たちは社会的地位も高かったり教養もある人であるから、自分が実際無保険者じゃないわけです。そういった良い立場にある人は、アメリカは先端医療とかすごい進んでいるし、お金があればあるほどいい治療受けれるわけだから、困ってないんですよね。それで、私たちは医療職として、そういった人を目の当たりに見ているから、本当にに変えなくちゃいけないって思うけれども、実際に決定をする人たちがあまり危機感がない。だから残念ながら政策は変わっていかないのかなと思います。
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安田:
今日精神病院を見てきましたが、健康保険に入るのに精神の分野での保険はあるのですか?
喜吉:どの保険であれ精神分野というのがあって、たとえば学校保険だと年に6回までの精神カウンセリングは保険でカバーされているとか、そういうふうに決まっています。あと眼科は眼科、歯科は歯科でまた別の保険があります。それで人によっては精神科に行くことが多かったりすれば、精神科プランみたいなものを保険に付加して、なるべくカバーの内容を多くしたりしています。
安田:精神病とか、気持ちのストレスによるというのは、事故がおきてから病気になるパターンがよくあると思うのですけど、それから保険に入るということは出来るのですか?
喜吉:何かの出来事があってから保険に入るというパターンは少ないと思います。
ただ保険に入るタイミングというのはすごく重要で、もし自分が雇用保険に入ることができるのであれば、あまり問題はないのですが、個人的に保険に加入する場合、例えば自営業の場合や無職の場合で、自己負担で保険に入ろうとする場合には、病気へのリスクが高ければ保険料は高くなります。だから日本でも言われているように喫煙をしているとか、家族の中でガンの率が高いとか、そういうことが分かれば保険料が高くなります。
近年、保険会社が個人情報を詮索しすぎて問題視され、3、4年くらい前に新しい法律が出来て、医療情報の取扱いが厳しくなりました。それで医療情報の開示は本当に必要なときしかしないという様になって、私たちのように研究をするものとしては、患者データを基に研究をすることのハードルが高くなってしまいました。
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